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慰謝料の金額

1.離婚の慰謝料

 離婚慰謝料は、離婚原因となった有責行為による精神的苦痛に対する損害賠償請求権と、離婚により配偶者の地位を失う精神的苦痛に対する損害賠償請求権に分けられます。前者は離婚原因慰謝料、後者は離婚自体慰謝料といわれます。
 判例では、慰謝料の算定要素として婚姻関係が破綻した経緯、有責行為の態様・程度・期間、関係修復への努力の有無、婚姻生活への誠実さ・協力の程度、年齢、性別、職業、経済状態、婚外子や認知の有無、生活費不払い、離婚による経済的不利益などを判断要素としています。
 裁判所で認容した慰謝料額は、100万円程度から1500万円程度までと様々ですが、200万円という金額が比較的多いですが、平均の金額は300万円から400万円程度です。1500万円を認めた事件というのは、夫(会社代表者77歳)、妻(無職73歳)で婚姻期間52年、別居期間は約40年で夫の長期間の不貞行為の継続、女性と同棲し子供を認知、妻に40年間生活費の不払い、夫は会社を経営し平均以上の生活をしているというケースです。
 判例からは、慰謝料額について婚姻期間、離婚原因などから一定の基準を見いだすことは難しく、どの要因をどの程度考慮しているか分からないことが多く、裁判官の価値判断に委ねられています。
  参考までに以下のような判例があります。
 不貞行為をいったん許された夫が、その後再び不貞行為を行って夫婦関係を破綻させたケースで、夫が、妻の前夫との間の子
を養子として成人させた事情が慰謝料の評価を低減させる事情であると認めつつ、慰謝料を800万円とした判例。
    性交拒否の慰謝料の判例としては、ポルノ雑誌に興味を示すが夫婦生活に応じない夫に対し500万円の慰謝料の支払いを認めた判例、婚姻に際し妻に自分の性交不能を告知せず、その後も性交不能が続いている場合に夫に200万円の慰謝料支払いを命じた判例、婚姻中に全く性的交渉を求めなかったことが原因で協議離婚したケースで夫に500万の慰謝料の支払いを命じた判例、妻が婚姻当初から性交渉を拒否し続けたことが原因で結婚9ヶ月で協議離婚したケースで妻に150万円の慰謝料の支払いを命じた判例があります。

2.不貞行為の相手方に対する慰謝料

 最高裁の昭和54年3月30日判決は、夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある、と判示しました。
 この最高裁の判決以後、下級審判決では不貞行為の相手方に対する慰謝料請求に限定を加えないケースがある一方で、原則として不法行為責任を認めたうえで、慰謝料請求に何らかの限定をする判例も数多く出ています。例えば、不貞の相手方の責任を副次的としたものや、肉体関係を持ったのが婚姻関係破綻後である場合に不貞の相手方の責任を否定したものなどです。また、慰謝料認容額が、1000万円の請求に対し150万円、2000万円の請求に対し200万円と少額になる傾向もあります。
 事案により一概には言えませんが、示談交渉により実際に解決する示談額は100万円から200万円という金額が多いというのが、交渉の実務を行っている弁護士の感覚です。

3.内縁関係の破棄

 内縁関係を不当に破棄した場合の慰謝料の算定要素は、基本的には離婚の場合と同じです。
 内縁関係は実体として婚姻関係と同視できるものの、婚姻届がないため特有の問題が生じることがあります。内縁関係の一方または両当事者に配偶者がいる、いわゆる重婚的内縁関係はその一つです。
 昭和30年代の昔の判例は、この重婚的内縁関係は原則として法的保護の対象外で、例外的に配偶者のある側の違法性が著しく大きいと評価できる場合に慰謝料請求が許されるとしてきました。しかし、最近の判例では、妻との法律婚が形骸化している場合には、内縁関係に相応の法的保護が与えられるべきとするなど、従来の判例の考え方から重婚的内縁関係を法的に保護するケースを広げたと見られるものが現れています。

4.婚約不履行

正当な理由なく婚約が破棄された場合、解消について責任がある者は慰謝料等の損害賠償の義務を負います。
判例で認容される慰謝料の金額は30万円程度から500万円を超えるものまでかなり金額に幅があります。
慰謝料の算定要素は個々の具体的事案により様々です。婚約していた期間、破棄に至った経過などが慰謝料を
算定する要素となります。
但し、最近の裁判所は、慰謝料額を比較的低額に抑える傾向にあります。   
当事務所は慰謝料請求事件を数多く扱っていますので、お気軽にご来所ご相談ください。

4.婚約不履行

妊娠中絶をめぐるトラブルは男女の交際でよくあるトラブルです。
男女が交際して女性が妊娠したため、男性が中絶を要望するケース
がよくあります。
妊娠したことををきっかけに婚約に至るケースなら問題ないのですが、
男性は結婚する気持ちはないため、女性に中絶を求めます。この場合、
女性が求めに応じて中絶する場合でも、このことが原因で交際を解消する
ことはよくあることです。自分は生みたかったのに、相手の男性に言われた
ため、不本意に中絶させられたとして、女性が中絶費用や慰謝料の支払い
を求めて男性とよくトラブルになります。
このような事件を受任した場合、示談で解決することが多く、裁判まで発展する
ことは稀ですが、下記の判例は同種事件を解決する場合の参考になります。

平成21年10月15日 東京高等裁判所 判決

【主文】
当裁判所も、被控訴人の請求は、控訴人に対して114万2302円及びこれに対する平成20年3月4日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却すべきものと判断する。

【判決要旨】
胎児が母体外において生命を保持することができない時期に、人工的に胎児等を母体外に排出する道を選択せざるを得ない場合においては、母体は、選択決定をしなければならない事態に立ち至った時点から、直接的に身体的及び精神的苦痛にさらされるとともに、その結果から生ずる経済的負担をせざるを得ないのであるが、それらの苦痛や負担は、A男とB子が共同で行った性行為に由来するものであって、その行為に源を発しその結果として生ずるものであるから、A男とB子とが等しくそれらによる不利益を分担すべき筋合いのものである。

しかして、直接的に身体的及び精神的苦痛を受け、経済的負担を負うB子としては、性行為という共同行為の結果として、母体外に排出させられる胎児の父親となったA男から、それらの不利益を軽減し、解消するための行為の提供を受け、あるいは、B子と等しく不利益を分担する行為の提供を受ける法的利益を有し、この利益は生殖の場において母性たるB子の父性たるA男に対して有する法律上保護される利益といって妨げなく、A男は母性に対して上記の行為を行う父性としての義務を負うものというべきであり、それらの不利益を軽減し、解消するための行為をせず、あるいは、B子と等しく不利益を分担することをしないという行為は、上記法律上保護される利益を違法に害するものとして、B子に対する不法行為としての評価を受けるものというべきであり、これによる損害賠償責任を免れないものと解するのが相当である。

A男は、父性としての上記責任に思いを致すことなく、B子と具体的な話し合いをしようともせず、ただB子に子を産むかそれとも中絶手術を受けるかどうかの選択をゆだねるのみであったのであり、B子との共同による先行行為により負担した父性としての上記行為義務を履行しなかったものであって、これは、とりもなおさず、上記認定に係わる法律上保護されるB子の法的利益を違法に侵害したものといわざるを得ず、これによって、B子に生じた損害を賠償する義務があるというべきである
(なお、その損害賠償義務の発生原因及び性質からすると、損害賠償義務の範囲は、生じた損害の2分の1とすべきである。)。

判決認容額

女性の精神的苦痛(慰謝料)  200万円
治療費等68万4604円
合計 268万4604円
双方平等に折半するとして、134万2302円
これに弁護士費用10万円を加算し、144万2302円
男性が中絶費用30万円を既に支払っているので、
30万円を控除して、114万2302円

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